「採用面接時に聞いてはいけないNG質問」です(採用)

次年度採用の面接が既に始まっている企業様も多いと思いますが、質問事項はあらかじめしっかり検討されていますでしょうか?

その場の雰囲気で質問をしていると、気を付けていても意外と「NG質問」をしてしまうので注意が必要です。

そもそも

「採用面接時に聞いてはいけないこと」

は、「法律(および指針)」で定められているのをご存知でしょうか?主に「職業安定法第5条の4」にて定められています。

法律で定められているということは、違反すると行政指導や改善命令の対象になる場合があります。改善命令に従わない場合は、罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科される場合もあります。

しかし、本当に怖いのは罰則などではなく、

NG質問をしてしまったことによる「企業イメージの低下」

だと思います。悪い情報はSNS等で簡単にシェアされてしまいます。一度「あの会社は危ない」というレッテルを貼られてしまったら、その印象を払拭するのはなかなか大変なことです。こうなると良い人材は集まりませんし、今いる優秀な社員が退職してしまうリスクもあります。

企業側も、たいていの場合は悪意があってNG質問をした訳ではありません。その場の雰囲気を和ませるための質問のつもりであったとか、採用後に業務に影響が出ないようにあらかじめ確認しておきたかったという場合がほとんどです。しかしそうであったとしても、こちらの意図は関係なく、NG質問はやはりNGなのです。

それでは、ここで

具体的にどんな質問がNGなのか

ご説明します。指針(平成 11 年労働省告示第 141 号)では、収集してはならない個人情報として以下の3つが明記されています。

1)人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項

2)思想及び信条

3)労働組合への加入状況

 

少し分かりにくいので例をあげますと、以下の通りです。

1)家族の職業・収入、本人の資産、容姿、スリーサイズ など

2)人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書 など

3)労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報

この中で、「愛読書」などはうっかり聞いてしまいそうですね。もちろんそれで合否を判定しようなんて企業側は思っていないのですが、もしここで驚くような回答が出たらどうでしょう? 例えば、反社会的なことが書かれている本であったり、面接官の価値観とは大きく違う本を読んでいたりする場合もあります。その場合「この子はちょっとやめておこうかな・・・」という気持ちになりませんか?これが問題なのです。

本来どのような本を読むかは自由ですし、業務に支障が出ない限り、どんな思想を持っていても関係ないはずなのです。それでもつい不合格を出したくなってしまう。だから、最初から質問してはいけないのです。

つまり、

法(及び指針)で面接時の質問(情報収集)に制限を設けている目的

は「本人の適性や能力以外のこと」により「不当な就職差別」がされないようにすることです。企業にも『採用の自由』はありますが、それも『応募者の基本的人権』を侵してまで認められないということですね。

上記の指針とは異なりますが、もう少し具体的なものを厚生労働省が「就職差別につながるおそれがある14事項」として挙げています。

こちらもよろしければご覧ください。

https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

 

但し、上記のような「NG質問」であっても、質問してよい場合があります。それが「本人の同意を得た場合」と「他の法律に定めのある場合」です。

前者の「本人の同意を得た場合」は注意が必要です。採用面接という場では、どうしても就職希望者の方が立場が弱くなってしまいます。そんな時に本人の同意を得たとしても、それが心からの同意とは限りません。「本人の同意を得たから大丈夫」と安易に捉えるのは危険です。

後者の「他の法律に定めのある場合」は、例えば警備会社で働く警備員は警備業法により「欠格事由」が定められています。欠格事由のうちのひとつに「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」があります。よって、通常であれば就職希望者が破産しているか否かは質問してはいけませんが、警備員の募集の場合は質問することが認められているということです。そこは区別して考えましょう。

今年の4月、

厚生労働省が、履歴書の「性別」欄を「男・女」選択方式から「任意記入欄」

とした書式を示しました。性別を聞くことは禁止されていませんが、心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」の方達が不当に差別されないようにという配慮です。このように、法で禁止されていなくても先回り配慮ができると良いですね。

こういった姿勢が社内のあらゆる場面で行われていけば、社員にとって安心でずっと働きたい会社となるはずです。面接の場面だけではなく、あらゆる場面で配慮し合える組織づくりを目指していきましょう。

協力 社会保険労務士

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