「アンガーマネジメント」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?(後編)

前回、「アンガーマネジメント」の土台部分について書かせていただきました。

今回はもう少し踏み込んで、「イラッとしたら(怒りの感情が湧いたら)どうすればよいか」という点についてご紹介したいと思います。 

イラッとしたら、次の3つの手順で実行してみてください。

1.6秒待つ

2.「許せる」か「許せない」かを判断する

3.「重要か」「変えられるか」という2つの視点で判別する 

【1】6秒待つ

こちらは非常にシンプルです。「イラッとしたら6秒待つ」、これだけです。6秒待っていただきたい理由は「怒りがピークの時に反射で行動すると後悔することが多いから」です。

「売り言葉に買い言葉」という諺のように、イラッとしてから6秒以内の言動はほとんど無意識の状態で行われるので、カッとなった感情の昂ぶりのまま強い言動を取りがちです。しかし、少なくとも6秒待てば、怒りのピークからは少し落ち着いて、自分の言動を意識してコントロールできるようになります。 

【2】「許せる」か「許せない」かを判断する

今発生した「イラッ」が、許せることか、許せないことかを決めましょう。「許せる」には、「自分の価値観とは違うけど、まぁいいか」という範囲まで含めて考えてください。本当は、常日頃から「こういう場合は許すけど、こうなったら許せない」という線引きゾーンを決めておくのが望ましいです。(5分の遅刻は許すけど、それ以上過ぎたら許さない等)もし「許せる」と決めたならば、ここで終了です。許せるのですから、目の前のイラッとした出来事に対して何か行う必要はありません。 

【3】「重要か」「変えられるか」という2つの視点で識別する

最後に、「イラッ」とした出来事を次の4つの箱のどれかに入れてください。自己判断で構いません。

①「重要」で「変えられる」

②「重要」だけど「変えられない」

③「重要ではない」けど「変えられる」

④「重要ではない」且つ「変えられない」

 

これら4つの箱には、それぞれの対処法があります。

①「重要」で「変えられる」

⇒【対処法】すぐに取り組む

 自分にとって重要なことで、且つ自分の行動によって変えられると思うならば、今すぐにその問題に取り組んでください。例えば、部下がミスをした場合、それが重要なことであり、自分が指導すれば今後同様のミスは防げるだろうと思うならば、すぐに指導するべきです。

 そして、できればその際に「何がどれくらい改善されれば満足なのか」を明確に決めておくのが望ましいです。例えば指導された部下も「もっと早く持ってこい!」とだけ言われたら「早くっていつまで?」と悩んでしまいます。「締め切りの前日までに持ってきて」などと具体的に伝えれば、同じ原因でイラッとすることは格段に減るでしょう。 

②「重要」だけど「変えられない」

⇒【対処法】現状を受け入れてできることをする

 例えば大事な会議に向かっているのに、渋滞にはまって全然動かないという場合で考えてみます。会議は重要なことですが、渋滞は自分が何かしたところで解消されません。この場合は、現状を受け入れた上で今できることをしてください。進まない渋滞の列を見つめてイライラし続けるよりも、渋滞という事実を受け入れ、会議に遅刻する旨の連絡を入れ、自分がいなくても会議が進められるように指示を出す等の行動をとった方が建設的です。 

③「重要ではない」けど「変えられる」

⇒【対処法】余裕があるときに取り組む

 やるべきことは日々無数にあるのですから、重要ではないことは一旦置いておいて、重要度の高いものから取り組んでください。そして余裕があるときに取り組めば良いのです。 

④「重要ではない」且つ「変えられない」

⇒【対処法】無視する

例えば電車の中でマナーの悪い人がいたとします。あなたは「非常識だな」と思いながら、その人を見続けてイライラしたりしていませんか?でもよく考えてみてください。その人は自分にとって重要な人ですか?そしてその人の行動は変えられますか?注意すれば直してくれるかもしれませんが、無視されるかもしれませんし、逆ギレして殴りかかってくるかもしれません。そんなリスクを冒してまでその現状をどうにかしなければなりませんか?こういう場合は、無視すれば良いのです。アンガーマネジメントの観点では、そっと車両を移動して見えない場所に行くのが正解です。 

以上の3ステップを踏めば、イラっとした後にとった行動で後悔することは格段に減ると思います。まずは6秒待つところから取り組んでみてください。 

怒りの感情は周囲の人にも伝染します。会社はたくさんの人が集まる場所ですから、一人のイライラは周囲のイライラに発展し、どんどん就業環境を悪化させます。まずは自分が、そしてできれば社内全員でアンガーマネジメントを習得し、怒りの感情との付き合い方を身に着けてください。そうやって、みんなで働きやすい職場環境を作っていけると良いですね。

アンガーマネージメント(前編)も是非、ご一読ください。

協力 社会保険労務士

 

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