なぜ、会議は噛み合わないのか
――『もののけ姫』に学ぶ、正しさが衝突する組織の正体
「どうして、うちの会議はいつも噛み合わないのか」
「誰も間違ったことは言っていないのに、なぜ疲れるのか」
中小企業の経営者や管理職の方と話をしていると、必ずこの問いに行き着きます。
決まらない。
空気が重い。
終わった後、どっと疲れる。
その原因は、会議の進め方やファシリテーションの技術不足ではありません。
もっと根深いところにあります。
この問いを考えるうえで、私はいつも一つの物語を思い出します。
それが、もののけ姫です。
目次
千と千尋、ラピュタの「次」に来る問い
これまで、組織論や働き方を語る文脈で、
千と千尋の神隠し
天空の城ラピュタ
を例に挙げてきました。
千と千尋は「個人の再生」の物語です。
自分の名前を失い、流されるように働いていた少女が、現場の中で役割を見つけ、自分の足で立っていく。
ラピュタは「力と支配」の物語です。
便利さや効率、圧倒的な力を手にしたとき、人は何を失うのか。
組織が目的を見失ったとき、何が起きるのか。
では、その次に来る問いは何か。
それは、「正しさと正しさがぶつかったとき、人はどうするのか」です。
正義は、ひとつじゃない
もののけ姫の世界には、分かりやすい悪者がいません。
森を守るサンは正しい。
自然を壊しているように見えるタタラ場のエボシ御前も、弱者を救い、人を生かしている。
どちらも「正義」なのです。
これは、会社の中でも日常的に起きています。
現場は、現場の正しさで動いている
経営者は、経営者の正しさで考えている
管理職は、板挟みの中で必死に調整している
誰もサボっていない。
誰も悪意を持っていない。
それでも、会議は荒れる。
なぜでしょうか。
会議がゴリゴリになる本当の理由
多くの会議では、無意識のうちに「勝ち負け」をつけようとします。
どちらが正しいか
どちらの意見を通すか
どちらが折れるか
この瞬間、会議は「対話」ではなく「戦い」になります。
もののけ姫で言えば、
森 vs タタラ場
という単純な構図に落とし込んだ瞬間、争いは終わりません。
会社でも同じです。
声の大きい人が勝つ。
立場の強い人が通す。
結果として、表面上は決まるけれど、心は残る。
そして次の会議は、さらに重くなる。
アシタカという存在
この物語の中で、唯一「どちらにも与しない」存在がいます。
それがアシタカです。
彼は、
サンの怒りを否定しない
エボシ御前の覚悟も理解しようとする
そして、こう言います。
「憎しみを憎む」
これが、組織における極めて重要な視点です。
組織に必要なのは、
「一番正しい人」ではありません。
「どちらかの味方をする人」でもありません。
正しさを翻訳できる人
視点を行き来できる人
つまり、アシタカ的な存在です。
会議の役割を勘違いしていないか
多くの会社で、会議はこう思われています。
結論を出す場
決める場
指示を下ろす場
しかし、それだけではありません。
本来の会議は、
「正しさをぶつける場」ではなく、
「正しさを並べて眺める場」
です。
並べて初めて、
共通点が見える
勘違いに気づく
次の一手が生まれる
もののけ姫でも、対話が完全にうまくいったわけではありません。
それでも、対話をやめなかった。
だから、未来が残った。
楽しい会議とは、軽い会議ではない
「楽しい会議」と言うと、
雑談が多い
笑いが多い
ゆるい
そんなイメージを持たれることがあります。
違います。
楽しい会議とは、
安心して本音が出る会議です。
否定されない
立場で潰されない
意見が尊重される
これは、もののけ姫の世界観とよく似ています。
厳しい。
簡単ではない。
それでも、人として向き合う。
だからこそ、エネルギーが生まれる。
会議を変えれば、対立は資産になる
対立は、悪ではありません。
対立は、エネルギーです。
問題は、それを
潰そうとするか
勝ち負けに変えるか
次につなげるか
その違いだけです。
会議の質が変わると、対立は消えません。
しかし、意味を持ち始めます。
もののけ姫が教えてくれるのは、
「答え」ではなく、
「姿勢」です。
結びに
もし、あなたの会社の会議が噛み合わないとしたら、
それは人が悪いのではありません。
能力が足りないのでもありません。
正しさが、ちゃんと存在している証拠です。
あとは、それを
どう扱うか。
どう並べるか。
どう次へ進めるか。
会議を変えれば、
対立はエネルギーになる。そして、
会社は静かに変わり始める。https://kaimu.co.jp/org-blog/1800/

