目次
序章:静まり返る会議室
月曜日の朝9時。
「それでは、今週の定例会を始めます。」
社長の佐藤がそう言うと、会議室はすぐに静まり返った。
営業の田中はノートを開き、経理の鈴木は数字の資料を見つめる。
報告、確認、指示。
沈黙。
「……他に意見は?」
誰も手を挙げない。
終わる頃には、みんなの目が時計の針を追っていた。
終わった瞬間、誰かがつぶやく。
「今日も、何も決まらなかったな。」
この会社の会議には、“会話”がなかった。
第一章:総務・木村の小さな違和感
総務の木村は、毎週の会議後、片づけをしながら思っていた。
「みんな、こんなに優しいのに、なぜ会議では話さないんだろう。」
昼休みになっても、会話は少ない。
「会議って何のためにあるんですかね?」
新人の斎藤のその言葉に、木村はドキッとした。
“新人が怖がる会議って、何かが間違ってる。”
第二章:社長への一言
ある日の午後、木村は勇気を出して社長室のドアを叩いた。
「社長、少しお話いいですか?」
「どうした?」
「会議…もう少し、みんなが話しやすくできたらいいなと思って。」
社長の佐藤は驚いた。
「話しやすく?」
「はい。報告だけじゃなくて、話し合える時間があったらと思うんです。」
佐藤は少し考え、ゆっくりと笑った。
「いいね。じゃあ、どうすればいいか、一緒に考えてみようか。」
この日から、小さな挑戦が始まった。
第三章:7人の侍、結成
社長は6人を呼んだ。
中村課長(中堅リーダー)
若手の田中(営業)
山本(ベテラン技術)
鈴木(経理)
木村(総務)
斎藤(新人)
「この7人で、うちの会議を変えていこう。」
社長は言った。
半年ではなく、“1年かけて”。
第四章:最初の3ヶ月 ― 手探りの日々
3ヶ月間、試行錯誤が続いた。
みんなが意見を出そうとするが、
会議の空気はすぐに元に戻る。
「どうしても社長に遠慮してしまう」
「結局、話がまとまらない」
木村は何度も落ち込んだ。
しかし、山本の一言が支えになった。
「おい、焦るな。俺たち何年も“話さない会議”をやってきたんだ。
3ヶ月で空気が少しでも変わるなら、上出来だ。」
そして3ヶ月目、最初の変化が起きた。
若手の田中が勇気を出して手を挙げたのだ。
「これ、試しにやってみたいんです。」
社長が笑って言った。
「いいじゃないか。やってみよう。失敗してもいい。」
その一言が、会社を動かした。
第五章:6ヶ月目 ― 自走が始まる
田中の提案は成功した。
作業効率が上がり、現場の士気が高まった。
次は経理の鈴木が、数字の観点から新しい提案を出した。
「こうすれば原価が下がります。」
中村課長はチームで改善を進め、
山本は若手を巻き込み、
木村は笑顔で全体を支えた。
そして、6ヶ月が経つ頃には、
社長が話す時間が減り、社員が話す時間が増えていた。
会議の中に「自分の声」が戻ってきた。
ー 続く ー

