事業を続けてきた経営者の想いを整理する
承継作業のスケジュールとは別に、会社の経営理念や経営者の想いを後継者・従業員へつなげていくことで、事業承継後もブレることのない事業運営、会社の強みを維持できます。将来に向けた計画を策定する前に、まず経営者が現在に至るまでの過去を振り返り、創業時の状況、これまで事業を運営してきた歩み、転機を再確認してみましょう。
目次
再確認しておきたいこれまでの歩み
会社の過去から現在までの歩み
◦なぜその時期に?
◦その場所で?
◦(なぜ他の事業ではなく)その事業を?
◦なぜその人(創業者)が?
経営者として事業に対する想い
◦信条
◦価値観
◦目的、希望
明文化して共有が大事
後継者 従業員
事業承継計画の策定に必要な作業
自社の現状分析
ステップ2(経営の見える化)を通じて把握した事業の現状を整理する。
今後の予測
事業承継した後、事業の持続的な成長を実現するために今後の環境の変化を予測し、対応策を検討する。
方向性、承継時期
現在の事業を継続していくのか、事業の転換を図っていくのかなど、自社の事業領域を明確にする。実現するための戦略についてもイメージを固め、事業承継の時期、方法を計画していく。
目標の設定
売上や利益、マーケットシェアといった具体的な指標ごとの中長期的な経営戦略について目標を設定する
課題の整理
後継者を中心とした経営体制へ移行する際の具体的課題を整理する。専門家への相談、資金調達といった要素を盛り込むことで、より現実的な計画が策定できる。
事業承継のステップ2経営の「見える化」をきちんと行っておくことで、実効的な事業承継計画の策定が可能となります。
(1) 会社の中長期目標を設定する
現状を把握した上でこれからの経営計画を作成する
経営の「見える化」、会社の「磨き上げ」などを行い、会社の現状把握と課題の解決策を進めながら、会社の将来に向けた中長期的な経営計画、経営ビジョンを策定します。会社の事業規模、事業の方向性、売上高や経常利益など具体的な数値目標を設定します。この中長期的な経営計画を踏まえて事業承継の実行計画を重ねていきます。
中小株式会社の中長期目標(事業計画)
経営理念
事業の方向性
将来の利益目標
現状5年後10年後
売上高
経常利益
(2) 事業承継に向けた経営者の行動を設定する
事業承継は経営者のアクションから始まる
経営者のアクションが事業承継に向けた第一歩となります。経営者の具体的な行動としては、後継者の選定に始まり、税理士などの専門家のサポートを受けながら、自社株式をはじめとする事業用資産の承継を計画的に進めます。後継者の育成も経営者の大事な役目の一つです。
人の承継に関する行動
後継者を選定する
専門家への相談
関係者への周知(計画の公表)
後継者への段階的な権限委譲
経営者の生前対策がトラブル防止に効果的
後継者に自社株式を集中的に承継することで経営権の分散リスクに備えることができます。そのためには、後継者を早期に選定し、経営者が計画的に生前贈与を進めていくことが望まれます。相続トラブルを防ぐためにも遺言を作成しておくことが理想的です。遺留分や後継者以外の相続人の心情にも配慮しましょう。
資産・知的資産の承継に関する行動
自社株式の生前贈与(暦年贈与の活用)
遺言の作成(遺留分への配慮)
後継者との綿密なコミュニケーション
(中小企業庁 経営者のための事業継承マニュアルより)
中小企業の経営計画はとても大事です
中小企業、特に小規模企業での経営計画作成率は半分以下ですが、どんなに小規模でも企業規模に関わらず、経営計画を作成しましょう。経営計画のない経営は、大海原を航海する船に例えれば、羅針盤を持たずに航海に出ているのと同じ事になります。大まかでもいいので、経営計画を作成してください。作ることにより気づきが生れたり、作ったことで数値や戦略が頭の中に残るようになります。
事業承継があるから作るのではなく、毎年、作成することを習慣化してください。
経営計画を社内全体に発表するのは、タイミングが大事です。
まず、自立していない社員が多い場合、計画を作っても実行できません。言い訳ばかりが増えて、達成できない事ばかりが増えて、モチベーションの低下に繋がります。1人1人の社員の成長をさせることを優先する必要があります。
次に組織自体が自立していない場合、例えば、ヒヤリ・ハットの法則というのがあります。1:29:300の法則(ハインリッヒの法則)いと言いますが、「ハインリッヒの法則」は、労働災害の分野でよく知られている事故の発生についての経験則の一つです。1つの重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が潜んでおり、さらにその背後には、事故に至らなかったものの、事故につながっていてもおかしくない事故寸前の300件にも及ぶ異常が存在するというものです。この確率は、企業の体質やクレーム対応と合わせて考えることが出来ます。社内の300の「これくらいならいいわ」で済ませたことが原因で、29の軽微なミスやクレームに繋がり、1つのいずれ大きなクレーム、事故に繋がるということです。
社内で、ちょっとしたことにも妥協しない企業文化が生れていたり、事前にクレームを素早く処理する社内のマニュアル化、ルール化がされていて、実行に移せる組織だったりならいいのです。
しかし、クレームが起きてから考えましょう、そのクレームは明日処理しましょう、などという先延ばし型の組織や「これくらいならいいわ」が日常化している、基準が曖昧である、我関せずで仕事をしている人が多い組織などは、経営計画をすぐに導入するには問題が多く発生してしまう組織となります。
最後に、経営者が自立していない場合、仕事に対しての姿勢が明確なのか? 曖昧なのか? 志があるのか? HOW TOばかりに気が取られるのか? 社員は見ています。中途半端な気持ちで、経営計画を発表するものではないということです。