法律を守ることの意義について

「こんな法律ちゃんと守っていたら商売やっていられないよ」という経営者様のお言葉を聞くことが度々あります。私は社会保険労務士ですので、「こんな法律」の部分は労働関係の法律が入ります。

私の肌感覚ですが、ここに入るものをランキングしたならば、

労務関係トップ3は以下の通りです

1)残業代

2)有給休暇

3)解雇

1の「残業代」について

タイムカード通りに残業時間をカウントし、法律で決められた方法で計算して支払う必要がありますが、これがきちんと守られていることは意外と少ないです。

15分単位で労働時間を切り捨てていたり、残業代の計算方法が誤っていたりします。究極的には、残業代を一切支払っていないというケースもあります。理由を聞きますと、「お客さんからもらえる料金は決まっているから、自ずと給料として支払える金額にも限界がある」というご意見が多いです。

2の「有給休暇」について

「どうして働いていない日に給料を支払わなければならないのか?」というお気持ちになるそうです。

3の「解雇」について

「日本では解雇が容易ではない」ことは良く知られているので、「何で仕事ができない人を解雇できないのか」というご意見をよくいただきます。厳密に言えば解雇できない訳ではありませんが、きちんとした手順を踏んでいないと、いざ裁判になった時に負けてしまう確率が高いです。

誰しも法律は守るべきと思っているでしょうから、「事業継続の為やむなく」というのが現実なのだと思います。

それでもなお、私は「法律を守ってください」と声を大にして申し上げたいです。その理由は「法律だから守るべき」ではありません。「罰則があるから」でも「会社の評判を守るため」でも「労働者の幸せの為」でもありません。

法律を守ることは「会社の利益を最大化する」ことに大きく寄与するからです。

会社が利益の最大化を目指して行動するのは当然のことです。ただ、そのために法律を守れないというのは、大きく間違っていると言わざるを得ません。

短期的に見れば、「法律を守らない方が利益を最大化できる」という場合も確かに存在してしまうので誤解してしまいがちなのですが、長期的にみると、それがいかに誤っているかがよく分かります。

例えば、残業代を支払わない会社があるとしましょう。同業他社が残業代を支払っている場合、人件費で差がつきます。売上が同じであれば、人件費が低い方が利益は大きいでしょう。

しかし、労働者はいずれ他の会社では残業代が支払われていることに気付きます。すると、優秀な人から転職していってしまうでしょうし、転職しない人もモチベーションが下がって生産性は落ちていくでしょう。

但し制度自体を変更することで、現状を変えないまま適法に持っていく方法もあります。例えば通常、1日8時間、週40時間を超えた場合は25%の割増賃金の支払いが必要ですが、変形労働時間制を導入することで一部割増賃金が不要になる場合があります。(このあたりの詳細は専門的なお話になりますので、今回は割愛致します。)

「現状が変わらないのであれば、違法が適法になったところで従業員からすれば対して変わらないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。きちんと法律の範囲内であると知ることで、自分の抱えていた不満が誤解に基づくものであったと気付き、不満の大部分は解消されます。モチベーションは労働者の「感情」に大きく左右されますから、この違いは大きいのです。

 

「有給休暇の取得しやすさ」や「安易な解雇をされないこと」

労働者の「安心」となり、それがいずれ会社の利益に繋がります。

有給休暇がきちんと取得できる会社は実は意外と多くないので、法律に定められている当たり前のことをしているだけでも、他社と差をつけられます。有給休暇を気持ちよく取った労働者は、また次の日から元気に働いてくれるでしょう。

また、「うちの会社は何かあったらすぐ解雇される」と思ったら、安心して働けませんが、失敗してもチャンスをもらえて、上司からきちんと指導してもらえる会社であれば、人は自然と集まってきますし、退職しないでしょう。

現在の日本は労働人口の減少により人材が不足しており、求人をかけてもなかなか来ないというお声をよく聞きます。労働者が安心して働ける環境を提供できない会社に人は集まりませんから、法律をきちんと守ることは、会社の継続的な発展の第一歩であり最低条件です。これからの時代、「安心して働ける会社」しか勝ち残っていけないと言っても過言ではありません。例えば今、法律を守れていない状態があるならば、できるところからで構いませんから、一歩ずつ改善していきましょう。

法律を守ることに加え、様々な方向から「働きやすい職場」を目指せば、自然と利益に繋がっていきます。それは「労働者に甘い会社」とは異なりますので、その違いを意識しながら発展し続ける組織づくりをしていきましょう。

協力 社会保険労務士

 

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